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基本情報

当院の骨粗鬆症外来は、循環器内科の医師が担当しています。

循環器内科で骨粗鬆症の診察というと意外に思われるかもしれませんが、循環器疾患と骨、骨粗鬆症には深い関係があります。

骨から溶け出したカルシウムが血管に沈着し石灰化を生じることは、今から50年前、既に「カルシウム・パラドックス」として報告されています。最近ではこれを「骨・血管連関」と呼ばれるようになりましたが、その詳細な機序はまだ明らかになっていません。こうして生じた血管の石灰化は心臓のカテーテル治療(PCI)や四肢の動脈の病気に対する血管内治療(EVT)の手技成功率や退院後の病状を悪化させることが知られています。また、骨粗鬆症があると、心血管疾患を生じるリスクが3.5倍になるという報告があり、高血圧症の2.6倍や脂質異常症の1.9倍よりも高いリスクです。

また最近、人口の高齢化により心不全患者が急増しており、このことは心不全パンデミック(大流行)と呼ばれ、大きな問題となっています。この心不全も骨粗鬆症と深い関係があります。骨の強さの指標に骨密度というのがあります。骨密度の高いグループの方が、心不全の発症率が低いとの報告があり、逆に心不全があると骨折リスクが6倍になるという報告もあります。

現在、本邦の骨粗鬆症患者数は1,280万人、もしくはそれ以上と言われ、国民の10人に1人にあたります。そして骨粗鬆症をベースにした「転倒・骨折」は、介護が必要となる大きな原因となっています。

生活習慣病として骨粗鬆症を診る

骨粗鬆症診療の最大の問題点は、適切な治療を受けている患者さんの割合が低いことです。正確な統計はありませんが、本邦の骨粗鬆症患者のうち、治療を受けているのは20~30%程度と言われ、10年前から大きな改善は認めません。骨粗鬆症患者さんのほとんどは無症候であることから、自分から骨の精査を求め医療機関を受診することは多くありません。そういった患者さんでも、高血圧などの生活習慣病で医療機関には通院しているものです。欧米では、骨粗鬆症を家庭医や一般内科医と呼ばれる医師が診療するようになり、骨折発生数が減少したとの報告があります。本邦においても、これからは生活習慣病診療に従事する内科系医師がもっと積極的に骨粗鬆症診療に取り組む必要があると思われます。骨粗鬆症と高血圧などの生活習慣病には多くの共通点があります(図1)。また20年前と違い、確実に骨折を予防できる薬がでてきました。

骨折の連鎖を断ち切る

図3

骨粗鬆症による脆弱性骨折には、手首(橈骨遠位端)、肩(上腕骨近位部)、背骨(椎体骨)、足の付け根(大腿骨近位部)の4ヵ所があり、それぞれに好発年齢があります。

50歳代から「橈骨遠位端骨折」と「上腕骨近位部骨折」が、60歳代から「椎体骨折」が、70歳代から「大腿骨近位部骨折」が増加します。

「大腿骨近位部骨折」は、寝たきり、要介護の原因となり、骨折後1年で20~25%の方が、5年で50%の方が亡くなると報告される予後不良の骨折です。40歳以上の女性において、全国市町村の中で兵庫県が大腿骨近位部骨折の発生率が最も高い県(ワーストワン)と報告されました。

骨粗鬆症による脆弱性骨折は繰り返すことが知られ、このことは「骨折の連鎖」と呼ばれています。最初から、すべての骨粗鬆症患者さんを治療するのは難しい話です。まずは骨粗鬆症を生活習慣病のひとつとしてとらえ(図2)、背骨の圧迫骨折や大腿骨近位部骨折の既往のある患者さんの骨折再発予防から始めていこうと考えております。

当院には骨密度を測定する機器も導入されています(図3)。骨粗鬆症の不安のある方は、かかりつけの先生にご相談されるか、当院の循環器内科外来をお尋ねください。

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