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2023.11.22

オーダーメイドな消化器がん治療で患者さんに寄り添う

医療法人川崎病院は、神戸市兵庫区に位置する278床の中規模急性期病院です。当院は「がん診療準拠点病院」に指定され、特に消化器がん患者の治療においては医療技術を駆使して、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療を提供しています。当院の消化器がん治療の特長について当院の副院長でもある谷川隆彦先生にお話を伺いました。

地域医療と連携しながらチーム医療

川崎病院は地域に根ざした病院として、患者さんにやさしい治療や親身なサポート、持続的なケアを提供しています。
当院は「がん診療準拠点病院」の指定病院であり、消化器がんを患った患者さんへの治療も地域との連携を重視しています。がんの進行度に応じてガイドラインに基づいた適切な治療を心がけており、消化器カンファレンスを通じて内視鏡的切除や腹腔鏡手術、化学療法などを用いて進行度に応じた標準的な治療を行っています。また、超高齢者などに対しては体力に応じた無理のないオーダーメイドの治療を行います。

転移のない消化管の早期がんに対しては消化器内科との連携で内視鏡的切除を第一選択とし、転移の可能性のある早期がんや切除可能な進行がんに対しては腹腔鏡手術を中心に外科的治療を行います。また、外科的切除だけでは根治が困難な場合には、化学療法や他施設との連携による放射線治療などを効果的に組み合わせた集学的治療を心がけています。化学療法を行う場合には、事前に当院の専門特殊外来である腫瘍内科外来を受診していただき、専門医と連携して治療を行うよう心がけています。

放射線治療が必要な場合には、神戸低侵襲がん医療センターと連携しているため、地域の医療機関と協力しながらチーム医療に取り組んでいます。
消化器がんという言葉でくくっても、症例は様々です。がんの深さ、拡がり、進行度やがんがある場所も含めてあらゆる状況から診断をしていかないといけません。例えば、がんが血管に浸潤している直腸がんや肝臓がんなど、難易度の高い手術や特殊な症例については、患者さんにご説明し了承を得たうえで、大阪大学や神戸大学、兵庫医科大学などに相談することで最善の治療提供につなげています。

このように、川崎病院ではさまざまな診療科や専門分野の医師、専門スタッフがチームを組み、消化器がん治療に取り組んでいます。あらゆる治療方法を結集して治療に当たり、一貫して最後まで川崎病院で患者さんに寄り添うことを大切にしています。

高度な技術を駆使し、消化器がん手術の約80%が腹腔鏡手術

消化器手術について、以前は開腹手術が一般的でしたが、近年では腹腔鏡手術やロボット手術など、患者さんにとって負担が少なく、傷が小さな低侵襲な手術方法が増えており、当院でも消化器がん手術の77%を腹腔鏡手術で行っています。腹腔鏡手術には医師の高度な技術が不可欠ですが、現在の消化器外科チームは主に卒後10年目以降の外科医で構成されており、その面で高い信頼を得ています。近年、ロボット支援手術が注目されていますが、当院では導入を検討中の段階です。

ロボット手術は腹腔鏡手術に比べて出血量が少なく、今のところ手振れがないため関節機能を活かした細かな操作が可能であるとされています。一方、当院では熟練した医師でチームを編成していますので、手術時間の短かさや手術費用の面においても腹腔鏡手術はロボット手術に比べて優れていると言えます。

今後はロボット手術がさらに進化していくと考えられますが、数億円の投資と年間数千万円の維持費が必要になるため、当院での導入には慎重を期しています。

患者さん一人ひとりの希望を尊重したオーダーメイド治療も

がん治療については、できるだけ大きな病院で手術を受けた方がいいと考える方が多く、患者さんが大規模病院へ集中してしまう傾向にあります。当院でも難易度が高く泌尿器科や婦人科などとの合同手術が必要な専門性の高いがん治療の場合には、大学病院などに紹介させていただいています。

しかしそれ以外の場合(特に高齢者の場合)、ご家庭の事情やアクセスの利便性を考慮して、近隣の病院で治療を希望されることが多いです。当院には豊富な実績を持つスタッフがいますし、患者さんが安心して治療を受けていただけるよう、どんなことでも丁寧に説明いたします。患者さんの質問にもお答えし、不安を取り除くことを心がけています。

また当院では、エビデンスに基づいた治療情報を丁寧に説明する一方で、合併症などによって通常の治療ができないケースや手術を望まない患者さんにも可能な範囲で対応しています。患者さんの希望を尊重し、一人ひとりに合った最適な治療計画を立案します。時にはガイドラインに沿った治療方法ではなく、オーダーメイドで治療を選択することもあります。患者さんの要望を取り入れながら柔軟に対応できるのが、川崎病院の強みの一つです。

患者さんにとって最善の選択をするために、治療に関する疑問やセカンドオピニオンなど病院選びに関する質問はどんどんしていただきたいと思います。川崎病院は、患者さんの信頼に応えるために全力でサポートしたいと考えています。どうぞ安心してご相談ください。

退院後も24時間フォロー、チーム医療で緩和ケアや在宅診療もサポート。緊急手術にも対応しています

当院では、がん治療に関わる多くのチームが協力し、チーム医療を提供しています。がん化学療法チーム、栄養サポートチーム、がんリハビリテーションチーム、緩和ケアチームなどが連携し、患者さんが早く社会生活に戻れるよう努めています。

また、退院後も患者さんが安心して生活できるよう、体調が悪化した場合にはかかりつけの救急医療として24時間体制でフォローアップを行っています。さらに、地域包括ケア病棟や緩和ケアなども利用できるように体制を整えています。退院後、自宅でのサポートが必要な患者さんには、当院の総合診療科や開業医と連携して在宅診療を提供し、地域がん診療の中心的な役割を果たしています。

当院では、消化器がん治療だけでなく、胆石、虫垂炎、内痔核、腸閉塞症などの消化器領域急性期疾患にも対応しています。外科医が毎日当直しているわけではありませんが、救急患者に対してはインターネットを利用した遠隔診療によって当直医と連携して治療にあたり、必要に応じて時間外の緊急手術にも対応しています。医師の働き方改革が注目を集めていますが、当院ではできる限り患者さんのニーズに合わせ、最適な治療法を提案し続けています。どんな困難や不安があっても、川崎病院には専門医師やスタッフがいます。いつでもお気軽にご相談ください。

プロフィール

谷川隆彦 外科医/副院長・外科総括部長

1987年鹿児島大学卒。大阪大学第二外科に入局後、独ハンブルグ大学外科病院にて研究員として勤務。帰国後、大阪大学医学部消化器外科、関連病院での勤務を経て2018年から医療法人川崎病院 副院長。外科総括部長、クオリティマネジメント推進本部長を兼任。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本がん治療学会消化器がん外科治療認定医。2016年より、近畿外科学会 評議員を務める。

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